ロジカルシンキングなど左脳による論理的思考が重要な一方で、それだけでなく右脳的なイメージ力をもったハイブリッドな思考が今後は重要であることを教えてくれるのがこの本書。
「21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由」はインプレス様より献本いただきました。
「21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由」目次
- CHAPTER0 21世紀型教育の先進国アメリカ
- CHAPTER1 デザイナーから学ぶハイブリッド知的生産術
- CHAPTER2 作り手魂の学校
- CHAPTER3 創造的問題解決の羅針盤
- CHAPTER4 創造モードへのスイッチ
- CHAPTER5 デザインというビジネス・キャリア
- CHAPTER6 デザイン思考は幸せに生きるためのライフスキル
なぜデザイン思考が重要なのか
21世紀に生きる人材がグローバルに活躍するために必要なスキル(21世紀型スキル)は以下のように定義されているそうです。
- クリティカル思考と問題解決
- 想像力とイノベーション
- コラボレーション
- 意思決定と学習
- ICT(情報通信技術)とデジタルリテラシー
- コミュニケーション
この中で「想像力とイノベーション」は論理期な思考では限界があり、デザイナーのような視点を持った「デザイン思考」も持ったハイブリッドな思考が必要だとしています。
「CHAPTER1 デザイナーから学ぶハイブリッド知的生産術」では右脳と左脳の両方を活用したハイブリッドな思考を得るために、それを成り立たせている「インプットの質」「発想のジャンプ」「アウトプットの質」を3つに分けて、デザイナーの思考視点で解説、学んでいきます。
「CHAPTER2 作り手魂の学校」ではより実践的な内容で手を動かす「プロトタイピング」のメソッドについて解説しており、さらにデザインプロセスやフレームワークなど、より深い部分をCHAPTER3で解説する流れとなっています。
相反する視点・思考
また、各CHAPTERの最後ではデザイナーの常識、ビジネスマンの常識としてそれぞれの思考・視点の違いがまとめられていて、本書を通して自分とは違う視点にきづかされる点も多かったです。
一部引用
■デザイナーの常識
・作りながら考える
・形にして議論する
・プロセスは緩く設定し、柔軟に変える
・良い点を見つけて強める■ビジネスマンの常識
・何を作るか考えてから作る
・前提条件をしっかり定義し、論理的正しさから結論を合意する
・プロセスは全員が明確にわかるよう構造化
・悪い点を潰していく
こういったのを見ると、まるで武術の剛と柔のようですね。
越境人材の時代が来る?
人材にはT字型人材(深い専門性の持った人材)、そしてそれを進めたn型人材(2つの深い専門性をもっていて、相互で活用できる人材)が重要となってきていますが、本書ではさらにそれを進めた「H字型人材」の時代が来るとしています。
ビジネス(商売)、デザイン(構想)、エンジニアリング(実現)という3つの構成において人材はそれぞれが専門性を持ち、機能が分けられていました。
しかし、今後はそれぞれの専門性と、専門ではなくとも相手の専門分野をある程度理解して話すことのできる、それぞれをつなぐ「H字型人材(越境人材)」こそが今後の社会において重要な担い手になるとしています。
とてつもなく1つのことに突き抜けている特殊な場合を除けば、少なくとも1つの専門分野だけの人材は今後難しくなってくることでしょう。
実践方法や具体的な思考プロセスなど、とてもわかりやすい内容になっており、デザイナー、非デザイナー共に今後のキャリアパスを考える上で大変参考になる一冊となっています。